「詳しく追跡せずに、継続して受診している患者の生死情報だけで生存率を計算している病院の生存率は高くなり、まじめに追跡している病院の生存率は低くなるので、注意が必要です」(伊藤さん)

 信頼できるデータの目安としては、追跡率95%以上が基準となっている。

 患者の背景については、病期のほか、平均年齢が参考になる。

「がんの治療は手術だけで完結することは少なく、放射線治療や薬物治療を組み合わせて治療効果を高めます。すべての治療を受けられるかどうかは、体力や合併症の有無など全身状態によるので、年齢による影響は大きいのです」(土岐医師)

 症例数が同程度で、患者の背景もある程度そろっていれば、病院の実力を比較できるのか。

「早期の場合は、手術だけで治療が終わることが多く、差が出にくいかもしれません。進行するほど治療が複雑になるので、病院の実力差が出やすく、生存率が高い病院は総合力が高いといえるでしょう」(土岐医師)

■緊急手術か予定手術かで術後死亡率が大きく異なる

 心臓病の治療成績の目安となる術後死亡率の大規模なデータは、日本心臓血管外科学会などが発足させた「JCVSD(日本心臓血管外科手術データベース機構)」がある。成人部門では、全国約600の施設が参加し、心臓手術を受けたすべての成人患者の情報を登録している。このデータをもとにした術後死亡率などは、手術の種類ごとに公表されている。しかし、公表されているのは全体の治療成績であり、病院ごとではない。JCVSDを立ちあげた高本眞一医師はこう話す。

「日本の心臓手術は、年間60例以下の病院が3分の1以上あります。手術の種類ごとに分けると症例はさらに少なくなってしまい、例えば『冠動脈バイパス手術』が年間10例だとすると、術後死亡が1人出ただけで術後死亡率10%となってしまいます。データとしては信頼性に欠けるため、病院ごとのデータは一般向けには公表していません」

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