■生存率が高ければいい病院とは限らない

 治療成績のデータはインターネットなどで調べることができる。特にがんの場合は、対象とする患者によってさまざまなデータがあるので、注意が必要だ。自分のがんについて理解を深めたいなら、基本となるのが「がん登録」のデータベースによる生存率だ。最も平均的なデータが、日本でがんと診断されたすべての人のデータを国が一つにまとめている「全国がん登録」による生存率だ。この仕組みは2016年に開始したため、まだ5年生存率は公表されていないが、その前身となる「地域がん登録」による生存率は、国立がん研究センターが運営するウェブサイト「がん情報サービス」で見られる。

 病院ごとの生存率は、専門的ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」のデータや「全国がん(成人病)センター協議会(通称『全がん協』)」に加盟している病院のデータなどが、主要ながんに限って公表されている。各学会がまとめているデータもあるが、手術症例だけを集計するなど、治療内容が偏っていることがある。

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2023』より
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2023』より

 右の表は、全がん協加盟施設のA病院、B病院の「5年相対生存率」だ。相対生存率とは、がん以外の死亡を除いた生存率を指し、すべての死亡を計算に含めた「実測生存率」とは異なる。

 両者を比較するとA病院のほうがどの病期もB病院に比べて生存率が高い。しかしこの生存率から、A病院のほうがすぐれているとはいえない。

「A病院の全症例数は109人、B病院は1722人。統計には必ず偶然によるばらつきが生じますが、少ない人数で得られた結果ほどばらつきが多く、多い人数で得られた結果はばらつきが少なくなります。つまり、症例数の多さはデータの信頼性に結びつくのです」(伊藤さん)

 例えば、症例数が少ないと、たまたま早期の人、合併症がない人、若い人が集まって生存率が高くなっている可能性がある。

 データの信頼性については、表の右下にある「追跡率」にも注目したい。追跡率とは、診断から5年後の生死状況を確認できている患者の割合を指す。一定期間受診していない患者に関しては、全国がん登録や住民票を照会して調べる必要がある。

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信頼できるデータの目安は、追跡率95%以上