しかし、病院が自施設のデータを集計し、ホームページなどで公表していたり、医師が患者に手術について説明する際に自施設のデータを伝えたりすることはある。こうしたデータを確認する際には、症例数のほか、「緊急手術」か「予定手術」かを確認したい。緊急手術は救急搬送されてきた患者に対して、放置すると命を落とすような場合におこなう緊急的な手術のことだ。予定手術は「待機手術」「定例手術」とも呼ばれ、一般的に2週間から1カ月ほど前に決まっている手術のことを指す。
緊急手術は予定手術に比べて病状や全身状態が悪いことが多く、術前検査などの準備も不十分になりやすい。このため、術後死亡率は高くなる傾向がある。
そのほか、がんと同様に年齢や合併症の有無も術後死亡率に影響する。JCVSDの情報を解析したデータは「JapanSCORE」という名称で公開され、手術を受ける患者の年齢、身長・体重、術前の既往、検査データなどを入力すると、術後死亡率や合併症のリスクがわかる。ただし、公表対象は医師に絞られている。
■病院の情報開示に対する姿勢も評価ポイントに
治療成績の見方を知ると、数字の比較で病院を選ぶのは難しいことがわかる。伊藤さんは「生存率を公表しているだけで信頼できるポイント」と話す。
「院内のがん登録の仕組みが整っているからこそ、データを集計できますし、さらに情報を積極的に開示するという姿勢の表れでもあると思います」
心臓手術は病院ごとの術後死亡率が大規模なデータとして公表されていないので、比較できないが、高本医師は「手術数が治療成績の目安になる」と話す。
「手術数が少ない病院は、術後死亡率が高くなることが複数のデータから明らかになっています。心臓手術は手技が複雑で経験が必要ですし、手術数が少なければ心臓外科医の数も少なく、術後の夜間対応が難しくなります。例えば冠動脈バイパス手術の場合、年間80例以上であれば、治療成績が安定します」