女木島の猫たち。3匹います。後方のモアイ像は、イースター島のモアイ像修復プロジェクトに参加した高松市のクレーンメーカーが吊り起こし実験に使用したもの(撮影/楠本涼)
女木島の猫たち。3匹います。後方のモアイ像は、イースター島のモアイ像修復プロジェクトに参加した高松市のクレーンメーカーが吊り起こし実験に使用したもの(撮影/楠本涼)
この記事の写真をすべて見る

 3年に一度の芸術の祭典、瀬戸内国際芸術祭がやってくる。華やかな有名作品が「表の顔」だとしたら、「裏の顔」も楽しみの一つ。今まで気付かなかった瀬戸内を巡ってみませんか。 

【写真特集】年々移住者が増え続けている?瀬戸内の魅力はこちら

*  *  *

●男木島

 高松港からフェリーで40分。男木島(おぎじま)は周囲5キロほどの小さな島だ。瀬戸内国際芸術祭の参加作品では、波の音しか聞こえない海岸沿いの堤防から福島方面に歩き出そうとしているというオブジェ「歩く方舟」(山口啓介)や、フェリー乗り場の「交流館」として今も使われている「男木島の魂」(ジャウメ・プレンサ)などが知られている。

 平地は少なく、島内は狭い路地や坂道、階段だらけ。その坂道や階段を少し上っただけで、瀬戸内海を見下ろす絶景スポットが無数に待っている。

 そんな男木島を歩いていると、民家の軒先などに置かれた、「オンバ」と呼ばれる手押し車が目に付く。よく見ると、カラフルなペイントがされたオンバも多い。実はこれ、2010年から瀬戸内芸術祭に参加している「オンバ・ファクトリー」の作品なのだ。

 瀬戸内芸術祭のボランティアサポーター・スタッフ「こえび隊」とともに、今年出品予定の新作を制作しているオンバ・ファクトリーの大島よしふみさんの工房を訪ねた。

「島の景観をこわさずに展示できる作品。そう思って注目したのが、車が通れない路地が多いこの島のお母さんたちが、野菜や花を運ぶ時に使う手押し車でした」(オンバ・ファクトリーの大島ちいさん)

 以来、夫で彫刻家のよしふみさんは、オンバ作品を制作。3年に一度の芸術祭が始まると、さまざまなオンバを展示するオンバ・ファクトリーが、多いときは1日200人もの人が訪れる人気スポットになる。またこれまで制作した約160台のオンバのうち約100台は、今も島のお母さんたちに押されて活躍しているそうだ。

 島のお母さんたちの愛車がオンバなら、お父さんたちが大切にしているのが漁船。男木島の港には、よしふみさんが同じく代表をつとめる「TEAM男気」のメンバーが船体をペイントして、13年に「男気プロジェクト」として芸術祭に参加した、カラフルな漁船が行き来する。

次のページ