●女木島

 高松市は、桃太郎伝説のある地方のひとつ。住民たちを苦しめる鬼たちが住んでいたと伝えられるのが、女木島(めぎじま)だ。

 別名も、ずばり鬼ケ島。島の中央にある鷲ケ峰山頂に紀元前100年ごろに掘られたとされる「鬼ケ島大洞窟」でも知られる。こちら、長さ400メートルの巨大洞窟。2013年からはここに、瀬戸内芸術祭の作品が展示されている。

 高松港からフェリーでわずか約20分。女木島港からバスで山を登って10分ほどで着く大洞窟を訪ねた。ひんやりと薄暗い中を進んで目をこらすと、洞窟のあちこちのくぼみに、香川県の伝統工芸品である鬼瓦が無数に置かれている。これが、県内3千人の中学生が制作した芸術祭参加作品「オニノコ瓦プロジェクト」だ。

 洞窟内には、普通の観光地だったころの様子を今に伝えるカラフルな鬼のオブジェも。今では最初の瀬戸内芸術祭から会場となっている芸術祭の島として、すっかり有名になった。案内所のおじさんが教えてくれる。

「高松空港に韓国、中国、台湾、香港からのLCCが来るようになりましたからね。女木島は高松からも近いので、最近、芸術祭期間外にも町を訪れるアジアのお客さんが増えました」

 芸術祭期間以外に訪れたときは、洞窟帰りは、「住吉神社」から丘をのぼり、13年から屋外展示されている「段々の風」(杉浦康益)に立ち寄るのがおすすめだ。

 もともとは傾斜地を切り開いた段々畑だったという見晴らしのいい丘に、陶(信楽の土)のブロック約400個を使ったオブジェを展示する作品。瀬戸内海の大パノラマを借景し、思わず深呼吸したくなるようなスケールの大きな作品になっている。

 ただしこのあたり、都会もんをギョッとさせる大量のひっつき虫(植物の種)の洗礼は不可避。ハリネズミのようになったスニーカーからひっつき虫をひとつずつはがしていると、東北から来て旅をしているという青年がおしえてくれた。

「東北ではひっつき虫というより、バカって言うんですよ」

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