2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大で医療が逼迫(ひっぱく)するなか、大阪市では治療に使われる医療用のガウンや防護服が不足した。そこで松井一郎市長は、代用として雨がっぱを送ってもらうよう呼びかけたところ、大量のかっぱが送られてきた。あれからちょうど3年。松井市長は今月6日に任期満了で退任となり、セレモニーが開かれるなか市役所をさったが……。
「使用していない雨がっぱがあれば、ぜひ大阪府・市に連絡してほしい」
2020年4月14日、松井市長が記者会見でそう訴えると、4日間で約33万枚の雨がっぱが送られてきた。
大阪市の幹部は当時を振り返り、こう話す。
「医療機関には市役所まで取りにきてもらいました。その後、1~2カ月すると供給が追い付いたためなのか、市役所ロビーはかっぱの山で埋め尽くされました」
市の火災予防条例では、燃えやすい合成樹脂類を1カ所に3トン以上保管する場合は、消防への届け出を義務付けており、呼びかけから2カ月後の6月には、市役所ロビーでの保管について消防から指導を受けた。
さて、あれからちょうど3年。あの雨がっぱはどうなったのか。
大阪市が情報公開で出した「雨合羽払出し」という一覧表がある。
約200の医療や介護施設に何枚配布したかを記録している。60枚から、多いところでは4万枚という数字もあった。
万単位で雨がっぱをもらったという大阪市総合医療センターでは、
「あの時は救急車3台を出動させて市役所まで行き、雨がっぱを受け取りました。救急車が病院に戻ってくると、医療従事者が取り合っていて、非常に助かりました」
と振り返る。一方で
「使えるものは次々に現場で医療従事者が着ていましたが、使い古したものや医療に適さないものも多く、現場感覚では100あれば50は使えない感じでした。残念ながら使えないものは捨てました」
と説明した。
同センターの医療従事者は、
「寄付でいただいたものなので、ありがたく使いました。ただ、着脱の際に感染リスクが高くなることがわかり、医療従事者の命を守る、という点では厳しいので、医療用としては使わなくなりました」
と話した。