その一例が会津藩だ。会津はかつて教育の先進地だった。日新館という藩校があり、そこには医者を養成する医学寮もあった。しかし、戊辰戦争で校舎は焼失し、その後、再建されることはなかった。
いま、人口約190万人の福島県に医学部は福島県立医大しかない。人口10万人当たりの医師数は204.5人と全国44位だ。
「医師不足は、救急搬送の受け入れ拒否による患者の死亡や、病院や診療科の閉鎖など、深刻な問題をすでに引き起こしています」(上さん)
医療格差は、教育や人材の格差にもつながる。ノーベル賞受賞者が西日本に圧倒的に多いのは、その証左だと上さんは言う。
「格差をなくすには、規制緩和が必要。そして高度教育機関を誘致し、人材を育てることです。歴史を乗り越えるには、明治政府が生み出した、医療格差と教育格差をデータに基づき直視することが肝要です」
姜さんが言う。
「近代日本の持つ光と影。とりわけ近代史の中で辺境や周辺に追いやられた影の部分にしっかりと目を向け、それが我々にどういう歴史的な課題を突き付けているのかを考えてほしい。明治150年の今求められているのは、そうした影を見る視点ではないでしょうか」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2018年3月12日号より