医師の数(AERA 2018年3月12日号より)
医師の数(AERA 2018年3月12日号より)
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 明治維新から150年。政府は唱える、「明治の精神に学べ」と。しかし、いまだ賊軍の汚名と怨念を忘れられない人たちもいる。明治礼賛だけではすくえない。私たちは歴史とどう向き合えばいいのか。

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 平成の時代に「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉が、いまも生きている。東京・九段にある靖国神社だ。

 靖国神社は戊辰戦争が終わった翌月の1869年6月、明治天皇が戊辰戦争で亡くなった官軍側の死者を弔うために建てた「東京招魂社(しょうこんしゃ)」を前身とする。そのため、戊辰戦争で敗れた旧幕府軍や会津藩士、西南戦争で賊軍として死亡した西郷隆盛も合祀(ごうし)されていない。極東国際軍事法廷でA級戦犯とされ、絞首刑となった東條英機元首相ら14人は、靖国に祭られている。

 政治学者で東京大学名誉教授の姜尚中さん(67)はこう話す。

「靖国神社というのは、近代国家の一つの顕彰装置。国家に奉じた人間は、たとえそれが国際的に戦争犯罪とみなされても、それはあくまでも国家のために殉じたという考え方です」

 明治期の薩摩、長州といった藩閥政治が、国内の医療格差に影響していると見る医師がいる。医療政策を研究するNPO法人「医療ガバナンス研究所」(東京都)理事長で、医師の上昌広(かみまさひろ)さん(49)だ。

「江戸時代、各地の藩校では西洋医学や工学を採り入れながら人材育成システムを構築していました。しかし、戊辰戦争で勝った薩長の新政府は、賊軍を武装解除させ、藩校も人材教育システムもろともつぶしてしまったのです」

 厚生労働省の「2016年医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、人口10万人当たりの医師数が最も多いのは京都府で334.9人。次いで徳島県(333.3人)、東京都(324人)、鳥取県(316.7人)の順だ。

 一方で、ワーストは埼玉県の167人。次いで茨城県(189.8人)、千葉県(189.8人)と続く。人口で見ると、圧倒的な「西高東低」となっている。

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