文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」委員を務めた安河内哲也さん(やすこうち・てつや、右):東進ハイスクール等の講師として、英語指導歴は20年以上。教育委員会等を通じて教員研修も行う/東京大学高大接続研究開発センター長 南風原朝和さん(はえばら・ともかず、左):東京大学理事・副学長などを経て現職。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学(撮影/横関一浩)
文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」委員を務めた安河内哲也さん(やすこうち・てつや、右):東進ハイスクール等の講師として、英語指導歴は20年以上。教育委員会等を通じて教員研修も行う/東京大学高大接続研究開発センター長 南風原朝和さん(はえばら・ともかず、左):東京大学理事・副学長などを経て現職。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学(撮影/横関一浩)
TEAPのSpeakingテスト(上)とTOEIC Speaking&Writing Tests(下)。「話す力」が求められる場面は増えている(写真:日本英語検定協会提供[上]/国際ビジネスコミュニケーション協会提供[下])
TEAPのSpeakingテスト(上)とTOEIC Speaking&Writing Tests(下)。「話す力」が求められる場面は増えている(写真:日本英語検定協会提供[上]/国際ビジネスコミュニケーション協会提供[下])

 2020年度に始まる「大学入学共通テスト」では英語が「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能評価になり、民間試験が活用されることに。4技能テストの推進派である東進ハイスクール講師・安河内哲也さんと、慎重派の東京大学高大接続研究開発センター長・南風原朝和さんが、問題点とその解決策を語った。

【写真】TEAPとTOEICのテストの様子

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安河内:はじめに少し背景を整理しておきましょう。グローバル化が進むなか、思うように英語力が上がっていないという問題があった。楽天の三木谷(浩史)さんなどが英語教育の強化を訴え、教育再生実行会議でTOEFLの義務化などに関する議論が始まったのが4技能化の議論の始まりかと思います。文部科学省で「英語教育の在り方に関する有識者会議」が開かれ、大学入試に世界の主流である各種の4技能試験を導入しようということになりました。各試験の成績対照は、世界標準のCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)と呼ばれる段階分けを使います。それが施行されるのは2020年度から。つまり現中3生、新高1生から4技能試験を全員受けなければならない。施行されるかどうかを議論するのではなく、生じる問題の解決策を議論する段階と考えています。

南風原:民間の各団体に分散させることで成績の比較可能性の問題が生じる。その問題を含む多くの問題が解決されないまま、国立大学協会(国大協)は「センター試験と民間試験を両方課す」と昨年11月に決めた。私はこれは拙速で、今からでも考え直すべきだと思います。もともと昨年6月に国大協は「いろんな問題をどう解決するのか示してほしい」と文科省に意見書を出していたが、文科省は現在に至るまで解決策を示していない。

安河内:私の立場としては、課題を解決し20年施行を目指すという立場で今日はお話をさせていただきます。導入は現場の生徒や教員の期待でもあります。入試が変われば、4領域をバランス良く教えることをうたっている学習指導要領に沿った授業ができる。現状は、生徒や先生方がコミュニカティブな授業をしたい・受けたいと思っても、校長や父母から苦情が出ることもあるんです。その状況を解決するには、結局入試を変えないと。南風原先生のご指摘のとおり、問題はあります。CEFRは6段階ですが、実際は日本の中高生はA1・A2という一番下の2レベルに集中し、上位の生徒がB1・B2レベルに一部いるだけ。たった4段階で区別するのは問題がある。解決策として私が提案したいのは、日本の学習環境にあわせて改良した目盛り「CEFR-J」です。一番下を三つに分けて、他を二つに分ける。受験生が集中するラインはこういう細かい目盛りが必要です。

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