南風原:現場の先生の期待とおっしゃるが、高校の英語教育が民間試験対策になって歪められてしまうという、高校の先生方の不安の声も大きい。また、CEFRの目盛りを細かくしても比較の問題はなお残ります。例えばTOEFLiBTとCEFRの対応表を見ると、08年ではCEFRのB2はTOEFL87点以上だったのに、14年には72点以上と大幅に下がった。こうした曖昧で不安定な基準を共通テストに使うのは問題がある。

安河内:確かにマークシートのテストと違ってスピーキング、ライティングテストは、完璧な公平性は確保できない。でも公平性だけ見るのでなく、その試験がどんな影響力を持つのかも考えてほしい。公平性を求めるあまり、2技能のままの現在の試験がどういう影響を今の英語教育の場に与えているか。バラ色の解決策がないのであれば、どこかでトレードオフしなければ。

南風原:高校3年の4~12月の間の2回までの試験結果を活用するというが、受験者数は単に50万人×2ではない。高2までにも受けるだろうから、膨大な規模になると予想され、そのことから採点者の質、セキュリティーが低下する。文科省は受験料を下げるように言っていますが、コストをかけずにこれをやろうとしたらますます質が下がる。経済的・地域的な格差もあるし、英語だけ不統一で制度設計として非常にいびつです。多くの課題が解決しないなら、20年度という期限にこだわる必要はありません。(構成/編集部・高橋有紀)

AERA 2018年3月5日号より抜粋