年末年始に実家に帰省して、親の老いを感じた人も多かったのではないだろうか。両親の介護や実家の管理、財産の処分、姑問題など、そろそろ考えてみませんか。AERA 2017年1月23日号では「家族問題」を大特集。年老いた母親と娘の関係は難しい。どうすればいいのか、精神科医の香山リカさんに話を聞いた。
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スマホの着信音にA子さん(47)はため息をつく。母(77)からの電話だ。「病院に送って」「あれ買ってきて」というお願いに始まり、「腰が痛い、足がしびれる」とグチり、揚げ句の果てに「死にたい」と言い出す。
ジム通いや旅行を楽しんでいた母が変わったのは、昨年、腰の病気を患ってから。A子さんには兄と姉がいるが、兄嫁には遠慮し、遠方で暮らす姉に心配をかけられないと、近くに住むA子さんばかりを頼るように。
「つらいのもわかるし、育ててもらった恩義もある。面倒を見なきゃいけないとは思うけど、毎日続くとうんざり」
着信を無視したことも。すると母は無言電話をかけてくるように。今は聞き流すようにしているが、エスカレートするわがままと依存に爆発寸前だ。
●母に優しくなれない
一人娘は大学生。学費のため、A子さんは契約社員としてフルタイムで働いている。
「あと少しで子育てから解放されるのに、次は親の介護?と思うと悲しくなる。やりたいことがたくさんあるのに……。一方で、老いた母に優しくなれないことに自己嫌悪も感じて」
精神科医の香山リカさんの元にも、親との関係に悩む人が多く訪れるという。特に子どもが40代後半から50代のバブル世代前後で、親が70~80代という親子、なかでも母と娘には「前後の世代にはあまり見られない特殊な関係性がある」と指摘する。
この子ども世代の女性の多くは、「これからは女子も勉強して大学に行く時代だ」と教育熱心に育てられ、しかし、20代半ばを過ぎると「女の幸せは結婚」「子どもを産んで一人前」とプレッシャーをかけられた。