●駅ビルが万博に匹敵
その象徴が、11年に開業した大阪駅のステーションビル(大阪ステーションシティ)や東京駅の再開発。大阪駅は開業1年で1億3千万人が駅ビルを利用したが、これは半年で6500万人を動員した1970年の大阪万博に匹敵する。強力なコンテンツがあるわけではない駅ビルに万博並みの動員力がある、と藤村さんは言う。
こうしたJRの鉄道駅を中心とした商業施設を藤村さんは「ステーションシティー」と呼ぶ。特に、JRは87年の民営化から十数年を経て人が動く場所である駅そのものの商品価値に気づいた。そこに、68年完成の霞が関ビルから新宿、池袋、六本木と発展してきた巨大開発の技術が結びつき、ステーションシティーは日本の「お家芸」となった。日本が世界に問うべきは、鉄道技術やステーションシティーのつくり方そのものだと藤村さんは語る。
「東南アジアなどにどう輸出していくかが発展のカギとなります」
そんな鉄道プロジェクトの中でも最大規模なのが、新幹線だ。
昨年3月には北陸新幹線(長野─金沢)、今年3月に北海道新幹線(新青森─新函館北斗)が開業した。北陸新幹線は今年4月に利用客数が1千万人に到達し、開業前に在来線の特急を利用していた客の3倍に増加。金沢や富山では地価が上昇し、JR金沢駅西側の広岡1丁目の地価上昇率(31.2%)は全国7位に。日本政策投資銀行が試算した経済効果は石川県全体で年間124億円、富山県で88億円に。富山県が今年発表した経済効果は421億円だ。
もうひとつの主役が、リニア中央新幹線。JR東海が手掛け、東京(品川)─大阪(新大阪)間を67分で結ぶ総工費9兆円の大プロジェクトだ。今年1月には東京側のターミナルとなる品川駅が着工。JR東海は東海道新幹線の経年劣化や東海地震などの大災害に備える必要があるとして、バイパスとしてのリニア中央新幹線の意義を主張する。
これらの整備には巨額の税金が投じられる。整備新幹線の場合、2016年度予算での建設費は15年度に比べ28%増の2050億円、うち国からは755億円を支出する。リニア中央新幹線に関しては、JR東海は建設費はすべて自費で賄う方針を打ち出していたが、安倍政権は7月に金融機関などから集めたお金を低金利で貸し出す「財政投融資」の枠組みを使ってJR東海に3兆円の融資を行うと表明。名古屋─大阪間のリニア中央新幹線について現状の2045年開業予定から最大8年間の前倒しを経済対策として打ち出し、JR東海側は「経営の自由を束縛されることは受け入れられない」(柘植康英社長)と釘をさしながらも受け入れた。