「自己中心的な夫は子どもが生まれても自分が一番。両親に心配をかけたくないので、産んだ覚えのない長男と思って頑張ってきたけど……」
その上、不倫が発覚。謝罪の言葉もなく、今はただの同居人と化している。夫は「君の実家の霊園に入ろうかな」と無邪気に語る。「私が何とかしてくれるとでも思っているの?」と心の中で思い、完全にスルーしている。
アンケートでは「できれば入りたくない」という回答も11人で、うち7人が女性。その一方で「入りたい」と回答したのは40人で、やはり多数を占めた。だが、理由をよくみてみると「どっちでもいい」「こだわりはない」など消極的な選択も。
実は、この一見すると夫婦円満というケースも侮ってはいけない。冒頭の女性も夫が亡くなるまで「そこそこ、今の生活に満足しているから、お墓はどうでもいい」と考えていたからだ。
●根本的な価値観の相違
さて、話をその女性の夫婦関係に戻そう。女性と夫はともに読書家。夫はフランス好きで、女性はミッション系の学校に通っていたため海外の文化には明るかった。「食」にこだわる贅沢なところも2人は似ていた。
転機は、夫の定年とともに訪れた。夫は農家の長男だったため、夫婦で先祖の墓と山林のある故郷に戻った。以来、夫は果樹栽培に凝りだし、特にブドウには「ワインをつくりたい」と心血を注いだ。女性も夫をサポートした。
一つだけ気になったのは、義理の弟と妹との距離感。特に末っ子の妹は、物心両面で夫に甘えてきた。夫も頼られることで絆を確かめていたようだった。
「山林田畑のことはちゃんとしておいてね」
女性は機会があるたびに、口を酸っぱくして夫に言ってきた。だが、夫は遺言を一行も残さず亡くなった。
すぐに相続問題が勃発。女性は自分の住む家があればよく、山林や農地にはこだわっていなかったが、夫が心血を注いだブドウ畑だけは、志のある若者に譲りたいと思っていた。それが夫の遺志だと女性は思ったからだ。だが、義理の弟妹たちの受け止め方は違っていた。