不機嫌で相手をコントロールする「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」。一昔前までは、夫婦間のフキハラは「夫から妻へ」というのが一般的なイメージでした。しかし実際に調査してみると、特に若い世代ほど夫婦間のフキハラの被害者は「男性に多い」ことがわかりました。家庭社会学の専門家である中央大学文学部の山田昌弘教授に、最近のフキハラ事情と回避する方法についてお聞きしました。

MENU 不機嫌で相手をコントロールする「夫婦間のフキハラ」とは 妻の不機嫌は「共働きなのに家事や育児の負担が多い」が一因 男性は「感情労働」が下手な傾向にある フキハラの原因は「外」にあることも多い

不機嫌で相手をコントロールする「夫婦間のフキハラ」とは

――夫婦間の不機嫌ハラスメントってどういうことでしょうか?

 ため息をつく、黙ったまま会話をしないなど「不機嫌」になって妻や夫を困らせることです。年に何回か、数時間だけといった短時間であれば、不機嫌になられた側も困らないでしょう。ですが「機嫌が悪くなると数週間は口を利かない」「たびたび不機嫌になるし、不機嫌の理由がわからない」というような状態が繰り返されると、相手は精神的に苦痛を感じることになります。これが夫婦間の不機嫌ハラスメントです。

――夫婦の不機嫌ハラスメントについて調査されたきっかけは何でしたか?

 1970年代は和室から洋室が増えた時代は「ダブルベッド世代」といって、多くの新婚夫婦がダブルベッドを買って一緒に寝ていたようです。ですが、今は結婚したからと言ってダブルベッドを買わない人も多いでしょうし、別室で寝ている夫婦もけっこういます。このように、家庭によって、年代によって、夫婦のあり方は違うだろうと考えていました。

 これまで、家事をどのくらいするといった夫婦の役割関係や夫婦の満足度などに関しては、社会学でも調査されてきましたが、夫婦が一緒に夕食を食べる頻度や言葉を交わす頻度、出かける際に手をつなぐかどうかなど、「夫婦の親密関係」を示すデータはあまりありませんでした。

 そこで2023年2月、夫婦の家庭生活における「パートナーの親密関係の変容に関する実証研究(親密性調査)」(対象者は25歳~64歳の1万305人、科学研究費の助成による)を実施しました。その項目の一つに、夫婦間の「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」を加えてみたのです。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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