これまで恋愛した男性は結婚に踏み切ろうとせず、「婚活」で会う男性からは「良妻賢母」の役割を求められた。彼の決断力と直球のアプローチに、グッときた。
「恋愛はもう一生分くらい経験したから、早く落ち着いて家族がほしかった。私のことを一番に思ってくれる人と一緒にいたいんだ、と彼のおかげで気づけました」
ナオミさんのような【恋愛ゼロ日婚】は、今年8月に俳優の堀北真希さんと山本耕史さんが電撃結婚した【交際ゼロ日婚】でも認知が深まった。芸能人の影響などで少しずつ常識の「枠」が緩くなる動きもある。かつては【格差婚】や【年の差婚】も騒がれる対象だったが、もはや新鮮な驚きはない。何度も離婚と再婚を繰り返す人や、離婚してからも仲が良いカップルも増えている。
記事中に名づけた【◯◯婚】という言葉が、常識外と言われなくなる。その積み重ねの先に、「結婚」の呪縛から解き放たれ、それぞれが望むパートナーとの関係性が共存できる社会が到来するはずだ。
(文中カタカナ名は仮名)
■『恋愛しない若者たち』を書いた牛窪恵さんに聞く
<結婚相手にほしいものは「恋愛」よりも「連帯」>
いまの若者は「恋愛はコスパに合わない」と感じています。時間を費やして相手を喜ばせたり食事をおごったりしても、結婚に結びつかないから意味がないと。子どものころは男女平等と育てられていながら、大人になれば、男性はしっかり稼いでプロポーズし、女性は料理の腕を磨いて姓を変えることが求められる。恋愛や結婚が相変わらず男女不平等な仕組みだからです。
一般の20代男女600人に調査すると、独身女性の43%に恋人ではない男性との性経験がありました。「女性は受け身であるべき」といった社会規範と自己欲求とのはざまで、「本命とのセックスより大胆に振る舞える」「気が楽」との声も多く出ました。
恋愛と結婚は本来「混ぜるな危険」。真逆なものです。なぜなら男性は恋愛では家庭的な女性を求めがちですが、結婚すると共働きの収入を妻に求めることが多い。一方、女性は恋愛では収入を求めても、結婚すると夫の家事や育児の能力も重視します。恋愛と結婚で相反するものを求めているのに混同して考えるから、相手に巡り合えない。
いま望まれているのは「恋愛結婚」ではなく「連帯結婚」です。共働きで家事や育児を協力し、悩みを共有したり家賃を分担したりと、「連帯したい」と思える相手を探すことです。稼ぐ妻と専業主夫の【逆転婚】、地方で暮らす【里山婚】など、結婚のパターンと可能性はいくらでも広がります。
「一生涯、愛し続けられる相手と恋愛を経てから」に限ると、結婚はますます遠ざかるでしょう。恋愛は面倒であればしなくてもいいのです。
※AERA 2015年10月19日号