「働いているから受験させられない」母たちの嘆き
子どもを地元の公立に通わせたけど、それで大丈夫? 忙しいワーキングマザーたちが、子の教育をめぐって揺れている。(ライター・島沢優子)
都内に住む会社員の女性(45)は長男が小学3年生のころ、クラス役員からメールが来るたびにうんざりした。
「また、臨時保護者会か……」
春先に学級崩壊のような状態になり、校長が介入したが一向に落ち着かない。まだ3年目の若い男性教諭は完全になめられていた。
「担任は当たり外れがある。特に3年生は学力に差が出やすい時期なので、どうなることかと心配でした」
授業がスムーズに進まないため、習っていない範囲が宿題に出ることなど日常茶飯事。そのたびに、仕事から帰ると息子にマンツーマンで教えなくてはいけなかった。
その宿題も量や頻度が少ないうえに、採点して戻すのも遅い。基本的にルーズな担任だった。授業中に居眠りまですると、ほかの母親から聞いた。
●全力でやってるの?
1駅先の国立大学の附属小学校の子どもは電車の中でも落ち着いて見えた。そのたびに、保育園の園長から勧められたことを思い出した。
「息子さん、利発だから受けてみたら」
でも、小学校受験は、親が二人三脚で指導しないととても乗り越えられないものだと心得ていたから、母親が働きながらの受験はあり得ないと思った。4年生になると、私立中学の受験者は2割ほどの地域なのに、クラスの半分ほどがいっせいに塾通いを始めた。長男も中学受験を考えていたわけではないのに、塾通いを開始。
「別にハイスペックな大人にしたいわけじゃないけれど、本人の力を最大限伸ばしてあげたいのが親心。それなのに、通っていた公立小学校は、なんというか、本当に全力でやってるの? と疑いたくなる先生が多かった」
全国的に見れば、小学校や中学校で「受験」をし、「地元の公立」以外の学校に行くケースは少数派だ。だが、都心部を中心に、よりよい教育を受けさせたいなどの理由で受験をする子どもたちは増えている。ただ、子どもの年齢が小さいほど、受験のためには「親の全面バックアップ」が必要。働く母たちの中には、自分が働いているせいで地元の公立にしか通わせられないのはいいのだろうか、と「公立ジレンマ」を感じる人もいる。
●学校は頼りにならない
都内の公務員の女性(49)が、公立小学校への不安を感じたのは、大学生になった長女が小学3年生のときだった。