娘が肺炎を起こして1週間入院したら、ちょうどその時に、割り算など難しい単元に突入した算数で、つまずいてしまった。担任に相談をしたが、

「大丈夫。すぐに取り返せますよ」

 と言うだけで、構ってもらえない。だが、持ち帰るテストの点数は明らかに下がった。塾通いや家庭教師などでなんとか追いつかせたかったが、女性自身が仕事と家事、育児でギリギリの毎日で、情報を集める時間もなかった。

 娘は4年生になると、いじめに遭い不登校になった。学校を休んでいては塾どころではないうえに、勉強はさらに遅れた。娘は完全に落ちこぼれになってしまった。

「こうなったのは、お母さんが働いているから、という周囲からの圧力を感じた。公立は、勉強も、友達関係も、親がある程度みてあげないとダメ。学校は頼りにならない」

 このまま同じ仲間と地元の公立中学に通わせると、また友達とのトラブルが起きると判断。女性は、中堅の私立中学受験を娘に勧めた。娘はそこで、英語という得意分野を見つけた。得意なことを極めることで自信を取り戻し、昨年は1年間の海外留学も果たした。

●読み書き計算が少ない

 千葉県に住む自営業の女性(43)も私立中学に子どもを通わせたかった一人だ。

「地元には、茶髪にバイクというマイルドヤンキーも多い。全体的に学力も低いため中学では私立に行かせたかった」

 だが、通いやすい近隣に私立中学がなく、仕方なく地元の公立中学校に入れた。案の定、校内の雰囲気は荒れていた。入部した剣道部の顧問は体罰こそないが、言葉の暴力が凄まじい。荒れていない私立の中高一貫校に編入させるため、女性は仕事の傍ら情報収集に没頭している。

 アエラはアエラネットを通して、子どもを公立校に通わせる親の不満と満足を聞いた。

 不満は、やはり「学力」面に集中した。

「教科書が薄く簡易で、特に読み書き計算が自分の時代とはまるで違い(学んだことを実際に試す)演習量が少ない」(50歳女性/神奈川県)

「担任教師の力量、算数と漢字の書き順の習得に不安がある」(45歳女性/千葉県)

「学ぶ量の少なさに不安」(44歳女性/東京都)

 加えて、先生の力量によって落差が大きいことや、校長の異動で方針が変わること、成績評価の不透明さなどが不満ポイントとして挙がった。

 ただ、28年間公立小学校で教鞭をとった白梅学園大学子ども学部教授の増田修治さんは、「私立なら大丈夫は幻想」という。私立の小中学校にもいじめや不登校など問題を抱える子どもは少なくない。増田さんにはそういった私立校からの講演依頼が多い。

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