どんな施設を使ったらいいのかわからない時は、自治体の介護保険課、近くの地域包括支援センターで相談に乗ってくれる。遠慮しないで聞いてみよう(撮影/高井正彦)
どんな施設を使ったらいいのかわからない時は、自治体の介護保険課、近くの地域包括支援センターで相談に乗ってくれる。遠慮しないで聞いてみよう(撮影/高井正彦)
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 仕事をしながらの介護。その両立は難しいが、制度をうまく利用することで乗り越えてきた人もいる。

 きめの細かい休暇制度を使って、最もつらい時期を乗り越えたのは、NTTドコモのCS推進部長の木村裕香さん(50)。同居の母(享年68)が亡くなる2008年までの8年間、介護と育児と仕事が重なった。

「職場には育児や介護の家族を支える休暇の選択肢がそろっているので助かりました」

 病院の付き添いやケアマネジャー※1との打ち合わせ、子どもの学校の行事と、平日に家庭の都合で休まなければならない時、1時間単位で取得できる有給休暇を利用してしのいだ。

 同社では年40時間、5日分の有休を取得できる制度がある。職場には「病院の付き添いで休みます」など、休暇を取得する度に理由を説明した。

 母は肝臓病が悪化して、入退院を繰り返した。子どもはまだ小学生と保育園児で、手がかかる時期だった。母の入院中、平日は週2回、18時に終業するとともに病院に直行。退院後、母の要介護度は最も重い「5」になり、朝昼2回の食事の世話が中心の訪問介護は、平日の週5日になった。夕方は自費でヘルパー※2を依頼し、母と子どもたちの食事を作ってもらった。

「母は私が仕事を続けられるように、子育てをサポートしてくれたんです。その分、今度は私が恩返しをしたかった。少しでも多く母と過ごすことが一番の親孝行だと思い、疲れていても病院通いだけは続けました」

※1介護支援専門員(ケアマネジャー):居宅介護支援事業者でケアプランを作成する
※2入浴、排泄や食事、洗濯など日常生活の支援を行う

AERA 2014年8月4日号より抜粋