東邦大学医療センター佐倉病院欧米に比べて日本人は、極端な肥満者の人が少ないといわれる。しかし、男性は肥満者の割合が増えており、40~60代は約3割(撮影/今村拓馬)
東邦大学医療センター佐倉病院
欧米に比べて日本人は、極端な肥満者の人が少ないといわれる。しかし、男性は肥満者の割合が増えており、40~60代は約3割(撮影/今村拓馬)
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 30年ほど前から日本でも行われるようになった、肥満症治療のための減量手術。脂肪吸引や脂肪摘出ではなく、胃の縮小を伴う手術のことをいう。効果が認められる一方で、誤解もあるようだ。

 肥満は、外見だけが問題なのではない。合併症として睡眠時無呼吸症候群、高脂血症、心血管系の病気、糖尿病などの病気を抱えている人が少なくない。

 食事や運動、栄養療法などさまざまな治療を受けても目標を達成できなかった人たちが肥満外科治療にたどりつく。東邦大学医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)の肥満外科外来に、減量手術を希望して来院するのは、30~40代の働き盛りが多い。院長補佐の龍野一郎・内科学教授は、減量手術に対して誤解があると話す。

「減量手術を受けたら、好きなだけ食べてもやせられると思われるようですが、誤解です。外科治療をして強制的に食事からのエネルギー摂取量を制限しますが、食欲が永遠に減退するわけではありません」

 同院では、手術をするのは、長期間にわたる食事療法や運動療法などを受けるために継続的に通院できる人に限っている。

「高度肥満になる人には理由があります。食べることでストレスを回避して、生活のバランスを取っていた人から食べることを取り上げたら、精神的なバランスが崩れるかもしれないわけです」(龍野さん)

 肥満外来を受診する患者には、うつなど精神的な病気を抱えている人が少なくない。ダイエットに失敗するたびに自分のがんばりが足りないと落ち込んでしまうのだ。

「減量手術を希望する患者さんには、内科、精神科、整形外科の医師や、栄養士、ソーシャルワーカー、理学療法士、臨床心理士など異なる診療科のスタッフで横断的なチームを編成してトータルに診ます。予後の患者さんのQOL(生活の質)を考えた上で、手術を行います」と龍野さん。

AERA 2013年11月4日号より抜粋