帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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作家の山口瞳さん (c)朝日新聞社
作家の山口瞳さん (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「『中庸の徳』を深める」。

【写真】作家の山口瞳さん

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【ポイント】
(1)人生の後半になってこそ知る「中庸の徳」
(2)中庸は東洋でも西洋でも重んじられていた
(3)ほどほどにしておけば、後に悔いることはない

 歳をとってこそ得られるものを大事にするというのが、ナイス・エイジングのひとつの方法です。若い時にはわからなかったのに、人生の後半になって初めて腑に落ちるということがありますよね。

 自分自身を振り返ってみると、「中庸の徳」というのがそのひとつです。

 また酒の話になってしまうのですが、外科医だった30歳代は本当によく飲みました。医者としての仕事に支障をきたすことはなかったのですが、二日酔いになるのはしょっちゅうでした。病院に行っても吐き気がして、医局のソファで横になるということが、少なくなかったのです。

 作家の山口瞳さんは、酒を飲むのは修行であり、酒場は品性を向上させるための道場だというようなことをおっしゃっていました。修行が足りなかった若い頃の私の飲み方は品性がなかったですね。つまり、中庸に酒を楽しむということができなかったのです。

 もちろん、今は違います。飲める酒量はたいして変わっていないと思うのですが、二日酔いになるということは、まったくありません。多からず少なからずに酒を飲むことで、酒の味わいがぐっと深まりました。まさに「中庸の徳」です。

 中庸といって、思い浮かべるのは儒学の四書、『論語』『孟子』『大学』『中庸』の中庸ですね。

 儒学では中庸を重んじるというのは知っていたのですが、広辞苑をひいてみたら、違った話が出てきました。

「アリストテレスの徳論の中心概念。過大と過小との両極の正しい中間を知見によって定めることで、その結果、徳として卓越する。例えば勇気は怯懦(きょうだ)と粗暴との中間であり、かつ質的に異なった徳の次元に達する」(第六版)

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