ビニール肌とは、肌の色がくすみ、はりも厚みもなく、新しい細胞が出てこずに、テカった肌のことだ。
以降、宇津木さんは20年近くかけて延べ2万5千人以上の肌をマイクロスコープで診察。
たどり着いた美容法が「肌断食」だった。
だが、この美容法に異論を唱える人もいる。
神戸大学名誉教授でアーツ銀座クリニック院長の市橋正光さんだ。肌のターンオーバーに化粧品が邪魔をしているとは考えにくく、皮膚がんやシミの元凶になる紫外線予防のための「サンスクリーン」(日焼け止め)や乾燥防止のローションやクリームは塗るべきだという。特に高齢者は乾燥対策は必須という。
「お年寄りの肌というのは水分や油分、セラミドも減り、乾いています。肌が乾燥すると真皮の神経が伸長し、表皮まで上がってきて、ちょっと触れただけでかゆくなる。冬は皮脂欠乏性皮膚炎になる人も多いです。セラミドが入っている化粧水を塗布することで予防すること。高齢になったら保湿をすることです」
と警鐘を鳴らす。
ただ、宇津木式でも、肌がどうしても乾燥するという人は「ワセリン」を微量なら塗布してもよいとしている。
「乾燥している肌はバリアーが壊れ、ミクロレベルのひび割れ、つまり生傷がある。傷につけてもよい化粧品はありません。傷につけても悪化しないのはワセリンか、生理食塩水ぐらいです」(宇津木さん)
記者もこの宇津木式に挑戦したが、何回も挫折をした。化粧水などを塗らないのは楽ちんでズボラな性分にはピッタリだが、さすがにこのしみだらけの顔を人さまにさらす勇気は出ない。だからファンデーションを塗ってしまう。そう前出の斎藤さんに話すと、
「ならば、最初からシミをレーザーでとってしまえばどうでしょうか。ファンデーションを塗るほうがふけて見えますよ」
宇津木さんも言う。
「こんなものをいつまでも肌につけるって、どうなんだろう……とか、基礎化粧品ってなんとなく皮膚に悪いような気がする、という“気づき”がない限り、理解できないかもしれませんね、私の美容法は」
美容法は人それぞれ。とりあえず、一度は、肌断食に挑戦してみても良いのかもしれない。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2019年7月19日号