化粧を一切やめれば、肌は美しくなる……。常識を覆すような持論で、美容業界に一石を投じる医師がいる。「クリニック宇津木流」院長の宇津木龍一さんだ。肌には何もつけない・与えない「肌断食」が美肌を作るという。
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「ほんとに、何も持ってきてないの?」
友人と訪れた水上温泉(群馬)の宿で、斎藤三代さん(59)は、驚かれた。他の二人は、温泉に入る前にメイクを落とし、入浴後は化粧水などを塗っている。しかし、斎藤さんは何もしない。16年間、化粧水すら塗らない。目元と口元にポイントメイクをする程度だ。
「持つのは口紅とマスカラ。眉ペンシルぐらい」
つまり、年中、肌は「すっぴん」状態なのだ。
「塗っている、と思われますが、顔には何も塗っていません。信じられない!と周囲から言われますが、本当です」
この美容法は宇津木式スキンケアと言われ、肌に栄養を与えない「肌断食」。宇津木さんが編み出した究極の美容法だ。
東京・日比谷の帝国ホテルタワー8階のクリニックを訪ねた。宇津木さんの著書は中国でも出版されており、中国人富裕層の患者も多い。患者人数を限定し、待合から診察まで完全個室状態だ。
宇津木さんは北里大学形成外科専任講師を経て、米国で美容医療を学んだ。北里研究所病院美容医学センターのセンター長になり、アンチエイジング専門形成外科である現在のクリニックを開業した。12年前のことだ。
宇津木さんの美容法は、こんな考えによる。
「美しい肌を作るには、外から何かを塗ったりして“補う”のではなく、肌のターンオーバー(生まれ変わりのサイクル)を正常に機能させるため、あえて肌には何も“つけず”、肌が本来持つ『自己再生力』を活発にさせることです」
肌の表皮細胞は新陳代謝によって日々生まれ変わっている。傷口が癒えるのも、傷痕がなくなるのも、こうした肌の再生力ゆえ。表皮は4層に分かれているが、正常な28日周期の場合、最も下層にある基底層で生まれた角化細胞が14日かけて一番上の角質層に達して死ぬ。死んだ細胞は残りの14日で角質層を作り、最後は皮膚の表面に押し出されて、
「一番強力な保湿成分とバリアー機能を持つ膜」を作る。この膜こそが肌本来の美しさを保つ、と宇津木さんは説く。