「かみ砕いて説明すると、正常なサイクルができている肌の表面には、役目を終えた『死んだ細胞』が、細胞間脂質を介し、ぴたっとくっつきあってラップの膜のようなものを作っている。その膜が皮膚の保湿膜であり、肌を守るバリアーとなっています。このバリアーこそ、肌の健康維持のために最も重要なのに、化粧品をつけすぎることで壊れてしまうんです」
多くの化粧品に含まれる界面活性剤は、細胞間脂質を溶かし、肌表面にある天然の保湿成分を失わせ肌を乾燥させる。宇津木さんによれば、これが化粧品をつけるデメリットという。
もう一つは「防腐剤」を含んでいるという点だ。
「市販されているほとんどの化粧品には防腐剤が入っています。この防腐剤は、われわれがけがをしたときに傷口に使う消毒薬よりも強力なものなのです。化粧品を朝晩顔に塗布するということは、朝晩強力な消毒薬で顔を消毒しているようなもの。これでは、肌を守ってくれる菌が少なくなってしまう」
つまり元来備わっている常在菌が減り、肌を清潔に保つ力が弱くなるということだ。
「北里研究所病院時代、日常的に化粧品をつけている人の肌にある常在菌の数を測ったことがあります。1平方ミリメートル内に、1万~3万ぐらいしかなかった。少ない人で500でしたよ。ちなみに私の鼻の脇には60万の常在菌がありますよ(笑)」
宇津木さんが、化粧品が肌に与える影響に疑問を持つようになったきっかけが、1999年に北里研究所病院美容医学センターで行った「美容ドック」による207人の肌診断の結果という。検査料金は45分3万5千円といい、比較的、美意識の高い女性が多く受けた。
「それでも結果は、『理想的な肌』はわずか2人(1%)で、『かなり乾燥はしているがまあまあ肌』が37人(18%)、『皺の前駆症状がある肌』が63人(30%)。『きめがない最悪の肌。ステロイドを何年もつけているような肌』が105人(51%)。半数以上が『ビニール肌』といわれるターンオーバーされていない萎縮した肌だったのです。これ、何かの間違いではないか、と思いました」(宇津木さん)