医学部は6年制なので一般的な4年制より学費がかかる。国立では入学金と6年間の授業料を合計すると約350万円。私大では6年間にかかる総費用は平均で約3200万円にもなる。4千万円を超えるところもある。
高い学費を払っても、医師は高収入なので元は取れるという考え方もある。しかし、社会保障費の国民負担は年々重くなり、医師の高収入にも批判は高まっている。厚労省は2028年以降は医師不足が解消されると推計。受験生の間には、「医者も将来安泰ではない」という意識が出始めているようだ。
合格者の選択にも変化が出ている。
河合塾によると、今年の私大医学部の合格者数は約6200人で、前年比114%と急増した。多くの私大で入学辞退者が増え、その結果、追加合格者も増えたようだ。
「不適切入試や将来の医者余りの情報をきっかけに、私大医学部を見る目が厳しくなったのでしょう。国公立など、より上の医学部を目指す動きが強まったように感じます」(同)
人気が下がる私大医学部では影響が出始めている。医学部は「序列」がはっきりしているとされる。最難関である旧帝国大を頂点に、歴史ある国公立大などが続き、比較的に新しい地方の私大が下に見られがちだ。
受験生の大学選びも、こうした序列に左右される。その結果、地方の私大では辞退者が続出する。
関東のある私大では、定員100人のところ正規合格者100人に加え、200人を補欠合格者としている。別の私大でも、正規合格者とほぼ同じ人数を補欠合格者としているという。
学費が高額な私大医学部では一人でも欠員が出れば、損失は大きい。そのため、欠員補充に大学側は必死だ。『医学部に来なさい!』などの著書がある昭和大学教授で心臓外科医の南淵明宏さんは、地方の私大の状況についてこう説明する。
「3月も末になると、大学から受験生に電話をかけて、『入学する医学部は決まっていますか?』『補欠合格されていますが、入学されますか?』などと確認します。入学者の確保に躍起になっているのです」