ちなみに、基本的にぼくは紙巻きたばこ(普通の箱に入ってるたばこ)は吸わない。たばこのにおいとワインは合わない。葉巻の香りのためにワインの香りが殺されてしまうし、舌もたばこでバカになるので、味覚も半減する。喫煙しながらワインというのは、ワインの楽しみを台なしにしてしまう、誠にもったいない行為だ。

 わかりやすい例えで言うならば、そう、トイレの中でたばこを吸うよう様ものだ。あれも喫煙を楽しむという観点からはまったく愚かな選択肢だと思うのだが(やったことないけど)。まあ、むしろ若気の至りであえて反社会的な行動を取るドキドキ感を楽しむ、ということなのかな。
 
 葉巻についても同様だ。香りも味覚も強すぎて、ワインの香りや味を殺してしまう。シガーバーとかでワイングラスをくるくるしながら葉巻を味わっている人を時々見るけれど、実にもったいないと思う。葉巻に合わせるならもっと香りのしっかりした、アルコール度数の高いブランデー、あるいはビールのような香りを楽しむ要素が小さい飲み物のほうがいい。まあ、同じブドウを原料にしているのに、ブランデーなら大丈夫なのもちょっと不思議な話だが。

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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