■浮気妻との暗闘 子のために直帰

「夫婦生活は長い会話である」という言葉を残したのはドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ。夫婦の会話が途切れ、お互いに関心がなくなると、子供たちまで巻き込む家族の悲劇が生じる。

「妻の精神が荒廃する前に何とかならなかったのか」と、肩を落とす公務員の佐藤優一さん(仮名・43歳)。妻の様子がおかしいと感じていた佐藤さんが、夫婦で共有するパソコンの検索履歴をのぞいたところ、妻の浮気が発覚した。アダルトグッズや海外のドラッグを購入し、SNSで知り合った男性らとアルコールを飲んではホテルで情事にふけっていた。

「騒ぎ立てると、妻は男と駆け落ちするかもしれない。子供たちもかわいそうだ」。佐藤さんの苦悩が始まった。

 佐藤さんは15年前に、取引先の従業員だった5歳年下の妻と結婚。小学生と中学生の子供がいるごく普通の家庭だ。

 ところが専業主婦の妻はずぼらな性格で、家は散らかり放題。1年前から朝食が食卓に並ばなくなり、夕飯も3日間同じメニューと、家事の手抜きが加速した。子供たちも「昨日と同じご飯だった」と口をとがらせる。

 佐藤さんは静観を貫いたが、妻の精神が荒廃した。

「朝方に帰宅しても悪びれる様子はない。理由を聞いても『関係ないでしょ』とか『あなたは仕事をしていればいいんだから』と暴言を吐く」

 佐藤さんは離婚を考えたが、ほとんどのケースで母親に親権が渡る。子供たちを妻に預けられない、とますます苦悩に陥る。

「素行の悪い妻がお金を使い込まないように管理していますが、もし妻が売春などしたらどうしようかと気が気ではありません」

 平日の残業は断り、早めに帰宅する。

■娘の将来案じるエリート会社員

 妻の暴言や浮気疑惑が原因で離婚を考えている大手証券会社次長の加山雅彦さん(仮名・47歳)だが、「14歳の娘が心配で離婚できない」と悩んでいる。

 7歳年下の妻とは社内恋愛で結婚し、1男1女に恵まれた。19歳の大学生の長男は一人暮らし。中学2年の長女と妻と3人で暮らす加山さんの最大の悩みが、娘の素行の悪さだ。

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