米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、石井啓一国土交通相は10月30日の閣議後会見で、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回の効力停止を決めたと発表。防衛省は8月以降止まっている工事を再開し、土砂投入に踏み切るという。
【写真】沖縄県与那国町にある陸上自衛隊の沿岸監視部隊のアンテナ施設
こうした動きの裏で安倍政権下で沖縄県、鹿児島県などの離島を「軍事要塞化」する作戦が着々と進行していた。
陸自は今年3月、“本版海兵隊”と呼ばれる水陸機動団を創設。本部は長崎県佐世保市の相浦駐屯地に設置された。「島嶼防衛」が目的で、敵によって奪われた離島に上陸し、奪還するのが任務だ。
安倍政権下で陸自は対中国を念頭に「南西シフト」を近年、より強めてきた。鹿児島・奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島などで自衛隊基地を新設または増強してきた。各島間の海峡を封鎖し、中国海軍を東シナ海に封じ込めるための態勢作りだ。
冷戦時代は旧ソ連が北海道に攻めてくるという「北の脅威」をあおって、陸自は北海道に重点的に配備されていたが、その「南西諸島版」だ。前出・流通経済大学の植村教授が説明する。
「北の脅威がなくなり、新たな職場確保のため別の脅威を作りだす必要性に迫られたのです。予算をつけたり部隊を動かしたりすることを正当化するシナリオが、島嶼防衛なのです。南西シフトでは『海・空』重視に傾きつつあるなかで、陸自も存在理由をアピールしたわけです。しかし、中国が、石油などの資源があるわけでもない沖縄を占領するメリットはないし、仮に占領しても、米軍がいるので物資の補給が断たれるから維持できません。いかにも空想的なシナリオです」
12年に作成された南西シフトの策定文書「日米の『動的防衛協力』について」では中国との有事の際、本土からの機動展開や地上戦を想定していたことが今年3月、発覚している。だが、現在建設が進むミサイル基地には触れられていない。
『自衛隊の南西シフト』の著者で、軍事ジャーナリストの小西誠氏が説明する。