沖縄戦の再現を政府は行うつもりなのだろうか。PAC3が常時配備されているのは沖縄本島だが、先島諸島などが攻撃されれば、輸送する時間的余裕などないだろう。自衛隊や米軍の都合で住民を紛争や戦闘の危険にさらすことになる。
中国が現実的に南西諸島を占領することは考えにくいが、軍事要塞化していれば当然、攻撃の標的になる。一触即発の危機はいつも隣り合わせだ。9月30日、米軍艦船が「航行の自由作戦」で南シナ海を航行していたところ、中国軍艦船が40メートルまで異常接近した。
「小競り合いをくり返し、エスカレートしていく恐れは常にある。双方で軍拡競争している現状を止めなければ、本当に南西諸島が犠牲になります」(小西氏)
もし、中国と有事になったとして、冒頭に触れた陸自に新編された水陸機動団で南西諸島を防衛、奪還できるだろうか。
機動団の装備品である水陸両用車AAV7は、FMSで52両を調達し、約366億円を費やすが、これも「無用の長物化」が懸念されている。
軍事ジャーナリストの清谷信一氏が語る。
「中古でもエンジンを替えれば、十分、使えるのに、米国から新品をわざわざ購入しました。もともと14年に試験品として4両を購入し、3年間かけて使えるか否か評価するはずだったのに、わずか半年間で試験を打ち切り、52両の調達を決めてしまいました。しかし、AAV7は砂浜からでないと揚陸できず、南西諸島の珊瑚礁や、護岸工事された海岸では使えないことは明らかです」
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2018年11月9日号