「あーん、アイアム、ライター。ライターのヤマダ」
ボスがニコニコしながら手を差し出してきた。握手だ。笑顔を浮かべているけれど、その顔には明らかに、
「アンタ、英語できないのね」
と書いてあった。脈拍が一層速くなる。
「えーっと、ヒ、ヒーイズ、キムラマンのカメラ」
「キムラマン?」
ボスが流暢に復唱した。
何かが間違っていると誰もが思いつつ、しばらくの間、誰もがその原因に気づかなかった。
四人は円陣を組んだまま、しばらくの間、きょとんとしていたのだった。
※週刊朝日 2018年6月8日号