「イエス、チケット、チケット」

「あーん、指定席?」

「?」

「えーっと、指定席は何て言うのかな。リザーブか」

「リザーブカー?」

 埒が明かないと思ったのか、女性の方がスマホの画面をバッとこちらに突き出した。中国語で「京都站」と書いてある。そりゃわかっとる。指定席を取りたいのかどうか聞きたいんぢゃが……。

 気まずい時間が流れた。カップルはあからさまな落胆の表情を浮かべた。

「ダメだなこいつは」

 彼らの顔には明らかに、そう書いてあった。

 大センセイ、自由席のきっぷしか買ってないのに、発車時刻が迫っているふりをして駅員さんのいる窓口を指差すと、足早に券売機の前から立ち去った。 

 おもてなしプロジェクトはあえなく、不発に終わってしまったのだった。 

 だが、世の中には逃げようのない国際交流の場面もある。某外資系金融機関に勤める、日本人キャリアウーマンの取材に行ったときのことである。

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