朝晩に冷え込む日が増えて、温かいお風呂がありがたい季節。そんな時期に、元気な人こそ注意したいのが入浴中の事故死。ヒートショックとも呼ばれ、1年間に交通事故の5倍近い死者が発生している。防ぐにはどうすればよいのか。
まずはチェックシートで、あてはまる項目を数えてほしい。5個以上あれば、入浴死に要注意だ。
厚生労働省の推計によると、入浴中の事故死は年間約1万9千人。これは2016年の交通事故の死者数3904人の5倍近い数字だ。一日の疲れを癒やすリラックスタイムのはずなのに、なぜお年寄りらは湯船につかったまま命を落とすのか。
東京都健康長寿医療センター研究所前副所長で、「多摩平の森の病院」院長の高橋龍太郎医師は、入浴中の死亡事故についてこう解説する。
「入浴中に亡くなったお年寄りの多くは、亡くなる前に意識を失っていると考えられます」
高橋医師によると、入浴中の死亡事故は家庭内での溺死として扱われるほか、心不全や心筋梗塞などによる病死とされることもある。
不審死として病理解剖されるケースでは、多少水を飲んでいるものの、海や川での溺死ほどの量ではない。助かろうと必死にもがくなどの様子がないまま、命を落としたことが推測される。死に至る引き金は日本法医学会でもはっきりとわかっていないが、浴槽の中で意識を失ってしまうことが、その後の悲劇につながるという。
なぜ、お風呂の中で意識を失ってしまうのか。
入浴前に脱衣室で服を脱ぐと、体は寒い環境にさらされる。その後、熱いお風呂に入ると短時間で体表面が激しい温度差に見舞われる。脱衣室は真冬に暖房していなければ10度ぐらいで、40度を超える浴槽につかれば、温度差は30度を超えてしまう。
「血圧が変動しやすい高齢者にとっては、激しい温度差が大きな負担です。血圧が上と下の両方向に急激に変動し、意識障害につながると考えられます」(高橋医師)