東京都内で7月31日、75歳の男性の車が衝突事故を起こし、近くのお店の女性が巻き添えで亡くなる事故があった。全国で相次ぐ高齢運転者の事故。いつまでも元気にハンドルを握る姿は頼もしい半面、「本当に大丈夫?」と不安を抱く人も多いのではないか。高齢者とその家族のための事故予防策を探った。
京都府警中京署(京都市)は1月から、65歳以上を対象に運転時の映像を記録するドライブレコーダーを無料で貸し出し始めた。同市内に住む自営業、寺本英次さん(68)は7月下旬、同署を訪れて自らの車につけていたレコーダーの映像を警察官と見た。
「右折で最短距離を行こうとすると、その先の横断歩道が見えづらく危険です。交差点は大きく回るようにしてください」。警察官からそうアドバイスされた。
寺本さんは運転歴45年以上。今も2日に1回は市内の得意先などを車で回る。「自分の癖や運転の荒さに改めて気づかされた。もっと、ほかの車や歩行者にも気を配らないといけないと感じた」と寺本さん。
同署の取り組みに、これまで24人が参加した。事故を起こしかねない危険運転をしていた人の家族には連絡し、注意を促した。映像チェックを機に、免許返納を決めた人もいた。村上秀幸交通課長は「どんな条件がそろえば免許返納につながるかも、アンケートなどで見極めたい」と話す。
レコーダーの映像チェックは、日頃の運転を客観的に見直してもらうことがねらいだ。長年の癖、反射神経や運動スキルの衰えを自覚すれば、事故防止につながる。同様の取り組みは京都のほか、福井、鹿児島、石川、岩手、山口などの各県警本部も実施している。
警察庁によると、全国の死亡事故(バイクや車に乗って、過失がより重い第一当事者になった事故)は2005年に6千件超だったが、16年は3410件と半分近くに減った。一方で、75歳以上の運転者による死亡事故は年459件にのぼる。全体に占める割合は、05年に約7%だったが、16年には約14%と倍増している。