西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、今の西武に改革が必要だという。
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年賀状を書く時期になると一年を振り返り、その年の元日に届いた年賀状を見返すこともある。2016年、西武ファンでもある吉永小百合さんからの年賀状には、西武にもっと頑張ってほしいというファンとしての思いが書かれていた。
私が現役を一筋で過ごした西武は、16年も4位に終わり、3年連続でクライマックスシリーズを逃した。秋山、浅村、中村、森に加えて栗山という精神的支柱を擁しながら、Aクラス入りができない要因は何なのか。辻発彦新監督も考えるところはあるだろう。しかし、まず球団の「体質」がしっかりしないと駄目だ。
外国人選手は何人とってきたのか。近年で当たったのは14年、シーズン途中で来日したメヒアだけではないかな。格安で契約する外国人も、数撃てば当たるという方式では、戦いが安定するわけがない。編成担当、国際スカウトを含めてお金のかけどころをいま一度、検証すべきときだと思う。
このオフには、FA権を行使した岸が楽天に移籍した。彼は西武のエースだ。まだ32歳。現役生活の最後は地元の東北に恩返ししたいという気持ちがあるにせよ、チームが力をつけるまで、最低でも1、2年は残留させるべきだったし、そのための交渉をどれだけ行ったのかな。「出ていく選手は追わない」「マネーゲームはしない」というドライな姿勢だけでは、球団の魅力はますます薄れる。
あとは現場のコーチの意識だ。私は西武の前身の西鉄に入団してから4年目までは37勝61敗。入団直後に黒い霧事件があって、先発が足りない中で登板機会を多く与えられた。右打者の体に向かって左肩を入れ、そこから外角にスライダーを投じたり、目線を打者の顔に向けて投げたり、負ける中で考えたのは、いかに相手打者がいやがることができるか、だった。
本当の才能を持ったスーパースターは王道を歩んでいい。しかし、そういった一部の選手をのぞいては、特長のぶつけ合いだ。豪速球が武器の投手が、制球やバランスを意識するあまり球威が落ちたら元も子もない。教科書通りの教え方だけでは、同じような選手しか育たない。
西武監督時代にはある選手に「打者の嫌がる投げ方をしてみろ」と話したことがある。肩や肘の負担を考えれば、体に負担のかかる投球フォームだったが、チーム状況、どの場所で1軍の戦力になれるか、自らの立ち位置というものを考えてもらった。プロは食うか、食われるかの世界だ。
厳しい言い方かもしれないが、今の西武には球団、現場の意識も含め改革が必要だ。17年こそ、変わり身を期待している。
※週刊朝日 2017年1月6-13日号