猛暑が続くと気になるのが「熱中症」だ。運動時や野外の作業時はもちろん、注意したいのは「古典的熱中症」という。気温だけでなく湿度も誘因になる。特に、高齢者は室内でもなりやすく、死に至ることも。疑わしきは即対処。早期認識、早期治療で重症化を防ごう。
いまや亜熱帯、とも言われる日本の夏。気温35度以上の猛暑日や最低気温25度以上の熱帯夜の日数は毎年のように更新を続け、都心ではヒートアイランド化が進む。厚生労働省の診療報酬明細書をもとに分析した「レセプトデータを用いた最近5年の熱中症患者の推移(2010~14年)」によると、熱中症で医療機関を受診する症例は、例年30万人程度で推移。70歳以上は70歳未満に比べ入院率は3倍、死亡率は6~10倍に上る。高齢者ほど熱中症の発症割合は高い。
熱中症は、高温環境下での発汗による脱水症と臓器の高体温が主な原因で、体内での熱の産出と熱の放散のバランスが崩れて、体温が著しく上昇した状態だ。
帝京大学医学部附属病院救命救急センター長の三宅康史医師によれば、熱中症は大きく分けて二つの種類がある。一つが屋外の暑熱環境下で運動や作業をして自らも熱を作り出している「労作性熱中症」。子どもが運動中に具合が悪くなったり、農業従事者が農作業中に倒れたり、というパターンがこれに当たる。
一方、高齢者では男女ともに注意すべき熱中症が「非労作性熱中症=古典的熱中症」だ。
「非労作性熱中症は、高齢者を中心に、屋外、屋内にかかわらず、暑熱環境にいただけで発症する。高齢者は数日続く真夏日と熱帯夜によって徐々に体力が低下し、疲労が蓄積。脱水が進行し、熱中症に持病なども加わることで悪化し体調を崩すので入院になりがちです」(三宅医師)
高齢、独居、日常生活動作の低下、精神疾患や心疾患などの基礎疾患があると熱中症関連死に対する独立危険因子となる。
熱中症の典型的な症状は、軽いものでは筋肉の痛み、こむら返り、四肢の脱力やしびれ、めまいなど。さらに進むと、頭痛、嘔吐・下痢、強い疲労感、軽い意識障害などが起こる。最重症となると、昏睡、ショック症状、全身けいれんなど。つまり、「熱中症は特徴的な症状はないと言ってもよい。(蒸し)暑い環境下での体調不良はどんな症状でも熱中症の可能性がある」(同)から厄介だ。しかも、高齢者は24時間「いつでも熱中症にかかる可能性がある」という。