熱中症を防ぐには日常生活における注意が基本。脱水対策が予防につながるため、まず脱水症にならないように「塩分・水分をとる」ことを心がけたい。
「三度の食事で水分をとるほかに、個体差もあるので一律ではありませんが、1時間ごとに100ミリリットルを目安に水やお茶など水分をこまめにとる。経口補水液は塩分や糖分が入っているので熱中症かなと思った場合に利用するといい」(同)
熱中症は発汗で水分だけでなく、電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)も失われるため、水分とともに適切な電解質の補給が重要になる。経口補水液なら下痢や嘔吐などの症状があっても、電解質を取り込みやすいため効果的だ。
経口補水液はいまや各社から販売され、ドラッグストアなどで手軽に購入できるが、成分には各社違いがある。例えば、医師や薬剤師の指導のもとでしか購入できない、日本で唯一、消費者庁から病者用食品の表示許可を得ている大塚製薬の「OS‐1」はナトリウム濃度が高めで100ミリリットルあたり115ミリグラム。脱水症の中等~重度に適している。また、味の素の「アクアソリタ」の同濃度は100ミリリットルあたり80ミリグラム。日常的な前脱水ケアなら塩分量が少ないほうが適しているという。味の素の栄養ケア食品事業担当の山口敬司さんは言う。
「アクアソリタは薬との飲み合わせは一般的には影響しませんが、脱水状態に合わせて少量をこまめにとることを勧めています。また、アクアソリタは体液より浸透圧が低いハイポトニック(低浸透圧)飲料なので、水分や電解質が体内に浸透しやすい。寝る前にコップ1杯飲んでいただくと夜間の脱水症対策にも効果的です」
もっとも通常の水分・電解質補給であれば、市販のスポーツドリンクでも十分という。ただし、糖分が多いので飲みすぎには注意が必要だ。経口補水液は水1リットルに食塩2グラム、砂糖20~40グラムを加えて作ることもできる。ちなみに梅昆布茶や味噌汁などもミネラル、塩分が含まれているため熱中症の予防に有効だ。
水分補給のほか、高齢者が心がけたいことは、「無理をしない、無理のない計画を立てること」と三宅医師。旅行や行楽地に出掛けることはもちろん、日中の行事参加や孫に付き合うような外出も無理しないことが肝心だ。日中にバスや電車など公共交通機関で移動しただけで夜になってから具合が悪くなることがあるという。外出してもコンビニなどの利用で暑さを避けたり、服装で工夫したりしよう。
※週刊朝日 2016年8月19日号より抜粋