著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、サックスプレーヤーの渡辺貞夫さんが選んだのは「室町砂場 赤坂店の天ざる」だ。
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この店を最初に訪れたのが、いつだったのか、誰とだったのかは覚えていません。が、6年前に他界した妻とは、よく来たものです。年末の大混雑の日には、店の外の行列に並んだこともあります。あまりに寒いのでホカロンを買って、一緒に並んでいた人たちにも配ったりしてね。そんなふうに待つのも、また楽しくて。もちろん今でも、よく利用させてもらっています。
ここの天ざるはね、海老の天ぷらじゃなくて海老と小柱のかき揚げなんです。それがまた香ばしい。江戸前のそばつゆにあらかじめ入れられて来るんですが、かつおぶしと醤油の香り立つそばつゆに負けない存在感。そばは更科粉のほのかな甘みとしっかりした腰があって。ほどよくかき揚げの油が混じったつゆで、さらっと食べられる。
もし、今日がここのそばを食べる最後のチャンスだって言われたら、気の置けない友人たちと来るかな。お銚子を頼んで、焼き鳥や玉子焼きで始めて、最後は大好きな天ざるでシメる。これが理想かな、と思います。
東京都港区赤坂6−3−5/営業時間:11:00~19:30L.O.(土は~19:00L.O.)/定休日:日・祝
※週刊朝日 2016年7月15日号