「男性の多くは外で働き、家庭のことは配偶者に依存する傾向が強いので、配偶者を失っても、同居の親に援助してもらうことで、解消できる可能性があります。一方、主に家事や育児などの役割を果たしてきた女性が配偶者を失うことは、経済的な支えをなくすことを意味すると考えられます。高齢の親との同居でその側面を充足する可能性は低く、リスクが男女で異なったと推測されます」

 夫婦問題研究家で、離婚カウンセラーの岡野あつこさんも、「親との同居」で生じた発症リスクの男女差について、本庄さんと同意見だ。その上で、これまで数々の離婚相談に乗った経験から、こう指摘する。

「男性の場合、面倒を見てくれる相手が代わっただけで、生活そのものはあまり変わらない。一方、女性は大きく変わります。例えば子連れで親元に戻ったシングルマザーは、働きに出て親に子どもの面倒を見てもらうことになる。感謝と後ろめたさから、教育方針などが違っても意見を言えずにグッとこらえてしまう。そういう小さなストレスの積み重ねが、脳卒中の発症など、徐々に健康問題につながっていくのではないでしょうか」

 子どもとの同居では、同居しない既婚者を男女それぞれ1とすると、同居する既婚者は1.07、1.10、同居しない非婚者は1.10、1.15、子どもと同居する非婚者は1.44、1.45で最も高かった。

 配偶者を失うことによる脳卒中の発症リスクを職業の有無で比較すると、非婚で職のない女性は既婚者で職に就く女性と比べて約3倍に。「背景には配偶者を失うことによる経済的な困難が影響しているのではないか」と本庄さんはみる。

 今回の発表で示された離別や死別による脳卒中の発症リスクの上昇。

 だが、3組に1組が離婚しているという日本。この結果から短絡的に“離婚が悪い”とか“離婚はしないほうがいい”という結論を導くものではないと本庄さんは言う。

「配偶者を失うことは誰にも起こり得ることです。そういうときでも、人ができる限り健康でいられるために、どのような配慮や支援が必要かを考えることが重要だと思います」

 本人の努力も大切だろう。脳卒中に限らず、離婚を機に体調を崩したり、病気を患ったりした人を多く見てきた前出の岡野さん。離婚経験者にこう助言する。

「離婚は相手のあることで、自分の思うとおりに進まない。体や心に受けるダメージはかなり大きいと思います。ただ、結婚を解消して生活が一変したときに、“新しい一歩”と切り替えられるか。それが離婚ストレスを乗り越えるポイントです。恋愛でも、子育てでも、仕事でもいい。目標を持つこと。もう一つは、自分を応援し、何かあったときに相談に乗ってくれる相手を見つけることが大事です」

週刊朝日 2016年4月22日号

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