このうち脳梗塞の発症リスクは、男女とも非婚者のほうが1.16倍高く、脳出血、くも膜下出血を合わせた「出血性脳卒中」のリスクは男性が1.48倍、女性が1.35倍高かった。

 出血性脳卒中で強い関連がみられたことについて、本庄さんは、こうみる。

「これまでの研究では、離別や死別を経験することで、飲酒量が増える、生活を楽しめず、強い心理的ストレスを感じるといった変化を生じることが報告されています。このような変化が引き金となり、出血性脳卒中の発症リスクを高めた可能性が考えられます」

 ストレスと脳卒中の関係について、作家で神経内科医の米山公啓さんは「背景にあるのは動脈硬化」と解説する。

「ストレスは交感神経を優位にして血圧を上げ、動脈硬化が進んでしまう。また、慢性的なストレスで過食になったり、過度な飲酒につながったりすることもあります。そうした生活習慣の変化も、動脈硬化の原因になります。離婚を経験したことで動脈硬化が進み、さらに血圧の高い状態が続けば、当然ながら脳卒中のリスクが高まります」

 興味深いのは、配偶者を失った人が親や子と同居しているかどうかで、発症リスクがどう変化したかという点をみているところだ。

 例えば、親と同居していない既婚者の脳卒中の発症リスクを男女それぞれ1とすると、親と同居する既婚者の発症リスクは男性0.72、女性0.86と低く、親と同居していない非婚者のリスクは1.25、1.21と男女ともに高い。一方で、親と同居している非婚者のリスクは0.96、1.33と女性で高かった。

「この結果は、同居する配偶者の何に依存しているかが、男女で異なることを示しているのかもしれません」(本庄さん)

 どういうことだろうか。本庄さんはこう読み解く。

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