「そう、いわゆるメタボ対策はイコール加齢性難聴対策と言えます。すでに重度の動脈硬化がある場合は望み薄ですが、初期段階なら生活習慣によって動脈硬化を改善できるというデータが最近報告されました。初期の動脈硬化をくい止めれば、難聴の進行を抑制できる可能性があります。ですから、諦めずに今からでもメタボ対策を始めてみてはいかがでしょうか」(同)
多くの中高年にとってメタボ対策は重要な健康課題だが、難聴予防と考えると、より重要度が迫ってくるのではないだろうか? まずは内臓脂肪をためこまないように、食事の栄養バランスを見直してみてはどうか。動脈硬化予防のためなら、血液をサラサラにする青魚や大豆製品、緑黄色野菜、にんにくなどを多くとることが大切。飲酒・喫煙は動脈硬化の危険因子なので、なるべく控えたい。
もちろん運動も必要だ。有酸素運動は血管の内壁を広げる作用があるので、動脈硬化予防にはぴったりだと石井医師は語る。
「有酸素運動を週3回すれば筋肉が成長して基礎代謝が上がり、メタボ体形になるのを防げます。週3回以上やっても基礎代謝量は変わらず、週1回ではやらないよりマシという程度ですから、週2、3回がベストです」
運動の重要性は、坂田医師も力説するところだ。
「聴こえないストレスから自律神経失調症になってしまう人がよくいます。内耳は自律神経の影響を強く受けますから、ますます聴こえが悪くなりかねません。そこで運動をすれば、基礎代謝がアップして自律神経が正常化することにつながりますし、脳の認知機能も向上します。難聴の人こそ、積極的に外へ出て運動する習慣をもってほしいですね」
(ライター・伊藤あゆみ)
※週刊朝日 2015年5月22日号より抜粋