年をとったら、いずれ耳が遠くなるもの……そう思って何も対策をしていない人は多いだろう。しかし、加齢にともなう難聴が予防できるとしたらどうだろうか? 諦める前に、今から始めるべき難聴対策を紹介しよう。
おすすめなのは「井戸端会議」だと「聴覚」を高めるトレーニング法を長年研究している目白大学耳科学研究所クリニックの坂田英明院長は言う。
「井戸端会議では、3、4人が集まって好き勝手にワイワイしゃべりますよね。一対一の会話とは違い、誰が何を言いだすのか予想がつかず、集中して聴かなければいけません。これが聴覚を鍛える良いトレーニングになるのです」
聴覚トレーニングの体験者からは、「聴こえかたが良くなった」という報告が寄せられている。坂田医師は「まだ研究段階で、すべての人に有効とは言えない」としつつ、「他の対策と併用しながら試みてみては」と述べている。
ところで、加齢性難聴になるのは65歳以上が主だが、なかには40~50代で聴こえの悪さを訴える人もいる。その背後には、ある病気が存在しているとJCHO(ジェイコー)東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則医師は指摘する。
「40~50代で高音域が聴こえにくくなった人たちを調べると、動脈硬化症の割合が非常に高いことがわかりました。動脈硬化症と難聴に深い関連があることは、他のさまざまなデータからも明らかになっています。若いうちに動脈硬化があると難聴が加速度的に進行するので、40代、50代でも安心できません」
動脈硬化症と言えば、動脈の血管内壁に脂肪などが沈着し、血流が妨げられる病気だ。特に首の動脈が狭まると、内耳の血流量が著しく低下し、蝸牛(かぎゅう)に酸素や栄養分が行き届かなくなる。すると、老化現象と同じように有毛細胞が脱落しやすくなるのだ。
「動脈硬化になるのは、糖尿病や高脂血症の人。たいがいは内臓脂肪が多くておなかが出っ張っていて血圧も高い、メタボの人です。要するにメタボと言われる人は、動脈硬化になりやすいのですね。逆に言えば、メタボにならないような生活をすれば動脈硬化を予防できるわけです」(石井医師)
それならば、メタボリック・シンドロームを予防することが難聴予防になるのだろうか?