熱湯がかかる、油や火花が飛ぶなど、多くの人が経験する熱傷。熱傷の治療は、外用薬の使用と手術に分けられる。手術は複数回になることが珍しくない。治療法や原因、応急処置について、救命救急を含め熱傷の治療全般を手がけている本赤十字病院の吉野雄一郎医師に聞いた。

 熱傷の治療は、それぞれの地域において形成外科、外科、皮膚科、救急・集中治療部などの診療科が連携しておこなうことが多いです。II度熱傷の受傷直後で、浅達性か深達性か判断が難しい場合は、まず塗り薬などの外用治療をおこないます。最近では深達性Ⅱ度でも範囲が狭ければ、皮膚の治りを早める「トラフェルミン」というスプレー剤を併用して治療することもあります。

 熱傷の手術は、第一に救命、第二に機能回復、第三に整容(見た目)という段階を踏みます。数年前に受傷した熱傷痕の見た目を整える手術も可能です。

 広範囲の重症熱傷の場合、手術回数は入院中に複数回、退院後の再建手術1回など、何回にも及びます。とくに小児の重症熱傷では、傷がふさがった後も骨や皮膚が成長することで瘢痕拘縮がみられ、手や指、足の骨の脱臼のリスクがあります。そのため、体の成長が止まる10~15年先まで見越して治療計画を立て、複数回の手術がおこなわれます。

 移植した皮膚はいずれ普通の皮膚と同様になりますが、少し乾燥やざらつきが残ります。また重症熱傷の場合、汗腺が失われてしまうので汗が出ず、体内に熱がこもりやすく、正常な汗腺から大量の汗をかきます。

 熱傷の原因では、幼児はつかまり立ちの時期が要注意です。ホットプレートに手をつく、電気ケトルを倒して熱湯がかかるなどは珍しくありません。冬は成人の湯たんぽによる低温やけどが増えます。受験生や女性に目立つようで、比較的低温でも湯たんぽが長時間皮膚に接触した結果、ひどい熱傷になります。

 熱傷の応急処置は、ただちに冷やすこと。服などが張りついている場合は、無理に剥がすと皮膚まで剥がれてしまうので、その上から冷やしてください。ただし小児と高齢者は低体温になりやすいので、冷やしすぎないことも重要です。

 たかがやけどと軽く考えず、痛みや水疱がなくても熱傷の範囲が本人の手のひら2枚分(体表面積の約2%)以上だったら病院に行くべきです。

週刊朝日  2014年11月14日号より抜粋