今や“冷え”は、うつやアレルギー、さらにはがんまで引き起こす「万病のもと」。東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長で、血めぐり研究会代表でもある川嶋朗さんによると、「EDは、特徴的な男の冷え症状」なのだという。川嶋さんは続ける。「そもそも冷えは、血行不良と大きく関係しています。勃起という現象は陰茎に十分に血液が充填されることですから、冷えて、血めぐり(血行)が悪くなれば血液が充填されず、用をなさないわけです」
冷えは瞬間的に「寒い」と感じることとは違う。手足など体の末端部分や腰、背中などが冷たく感じる病状や体質のことで、外気の温度の低さとは関係なく体の中に冷たさが入り込んだ状態を指す。「体温が36度以下」なら、それはもう立派な冷えだ。
原因は様々だ。例えば夏場に冷房に当たりすぎることや、冷たいものを飲みすぎること。外から中から体を冷やす生活が、冷えた人をつくってしまうのだ。運動不足も大敵。車やエレベーターなどに頼る便利な社会も原因のひとつ。文明が人間の調整能力を奪った、と川嶋さんは分析する。
「体は本来、寒冷刺激を与えられると体温を維持するために呼吸数を増やしたり心拍数を増やして熱をつくりますが、年中、冷蔵庫で冷やしたものを摂っていると、冷たい刺激に鈍感になって体温が下がる一方です。それに今はみんな薄着でしょう。急に寒波がきても、体温維持機能はうまく働かない。寒さというストレスに、現代人がついていけなくなっているのです」
こうした現代人が抱える冷えを、川嶋さんは〈時限爆弾〉と呼ぶ。冷えの代表的症状は肩こり、頭痛、腰痛、生理痛、ED、めまい、耳鳴り、吐き気や消化不良などだが、それが積み重なったり放置されると、より深刻な病気にもなるという。代表的なものが、がん、糖尿病や脂肪肝、高血圧、うつ、アレルギーなどだ。
「がんの人の体に触れると、ハッとするほど冷たい。聞いてみると、皆一様に、そういえば昔から体温が低かったと答えるんです」
※週刊朝日 2013年2月8日号