料理研究家の柳谷晃子氏によると、和菓子の定番である「羊羹」は、かつては肉料理であったという。

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 羊羹は日本の伝統菓子の定番ですが、中国から渡来した鎌倉時代には菓子ではなく羊の料理でした。肝の形に成形して蒸した羊肉を汁に浮かべた料理で、「羊肝」と書かれたこともあるそうです。

 日本では、肉食を禁じられていた当時の禅僧が“もどき料理”として羊の代わりに小豆を使い、それがきっかけで、お菓子の羊羹へと変貌していったといわれています。

 羊羹には、練り羊羹と蒸し羊羹があります。前者は小豆粉、砂糖に寒天を加え、加熱しながら練って固めます。小豆の力をできるだけ利用して作られるものが良いとされ、虎屋の羊羹は今でも毎日塩梅を決めるため、配合が異なるのだそうです。本当に奥深い世界なんですね。

週刊朝日 2012年11月23日号