秋晴れの広がりとともに南下が進む紅葉前線。以前の記事「西日本を走る『紅葉絶景路線』で観光列車も満喫!」では観光列車も楽しめる紅葉路線を取り上げたが、今回はちょっと視点を変えて、「普通列車」で紅葉狩りを満喫できる全国の路線を探ってみた。おおむね10月中旬から11月上・中旬ごろにかけての見ごろが期待できそうな路線を取り上げてみた。
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■「東日本随一の秘境路線」紅葉に染まる渓谷美を堪能
10月も半ばを過ぎ、東北地方でも北部から次第に山々が色づきはじめており、路線によっては紅葉探訪もギリギリのタイミングかもしれない。そんななか、まず注目してみたいのが「JR山田線」である。
山田線は盛岡を起点に三陸海岸沿いの町・宮古までを結ぶ102.1キロの非電化ローカル線。北上山地を横断するルートは沿線人口が極端に少なく、とりわけ上米内(かみよない)~区界(くざかい)間は秘境といってもいいロケーションとなっている。
事実、この区間にあった大志田(おおしだ)駅と浅岸(あさぎし)駅は2016年3月に廃止、25.7キロにも及ぶ停車場のない区間となってしまった。こうしたロケーションなだけに沿線には自然環境が濃厚に残されており、紅葉の絶景も期待できることになる。
盛岡から2駅目の山岸を過ぎるとほどなく盛岡市街地を抜け、上米内から米内川に沿って区界峠を目指す。周辺はカラマツが目立ち、タイミグが合えば凛とした紅葉をみせてくれることだろう。区界トンネルを抜けると区界高原で、ここまでのうっそうとした車窓から一転して開放的な風景が広がり、ホっとひと息つくところ。
列車は早池峰山(はやちねさん)の北麓から東麓へと回り込むように進み、閉伊川(へいがわ)に寄り添いながら勾配を下ってゆく。区界~川内(かわうち)間は紅葉と渓谷との調和がとりわけ見事な区間。平津戸~川内間に架かる小滝鉄橋は鉄道写真の撮影名所としても知られ、必見の紅葉ポイントだ。
川内を過ぎると秘境感は次第に薄れるものの、閉伊川の渓谷と沿線の山里風景などが車窓を楽しませてくれる。