器械出しナースのその後
ハルステッドは消毒液の刺激作用について述べた論文で「私はある特別な女性のために薄いゴムの手袋を作らせた。それがとても良い出来だったため追加オーダーがなされた」と綴っている。しかし、キャロラインはほとんど手袋を使うことないままに、まもなく病院を退職した。彼女はハルステッド夫人となり、気難しい夫に献身的に尽くす道を選んだのだった。
ハルステッドは30年の教授職を全うして退官後、妻の資産であるノースカロライナの山荘で趣味のダリアの栽培と天体観測を楽しみつつ、70歳で世を去るまで共に余生を過ごした。愛妻キャロラインも病を得て2週間後その後を追った。子どもには恵まれなかったが、仲の良い夫婦だったようである。
この話は女子学生の多い看護学校や看護学部で話すと受けるので、ずっと持ちネタにしてきたのだが、昨年、某看護大学の教授と話していたところ、「今どき、医者(特に薄給で忙しい大学の医者)との結婚を玉の輿と思うナースはいないし、ましてや専門的なキャリアを捨てて夫に尽くすというのはあり得ない」と一笑に付されてしまった。時代は変わるというべきか。