全世界の医療職にゴム手袋が普及したワケは…(写真:getty images)
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 医学部や歯学部の微生物・感染症実習で手洗いは必須項目である。筆者が研修医だった頃、上司に妙に手洗いにうるさい先生がいて、石鹸で5分、消毒薬でブラシを換えて一心不乱に15分くらい洗うことを教わった。これには大手術前の精神統一(?)効果もあるのだという。実際、手洗い後に培養用寒天に手を乗せて見ると、生えてくる細菌のコロニーはほとんどゼロなので、既に世を去られたこの先生には今でも感謝している。最近では、アルコールスプレーが一般化したせいか、術前の手洗いはだいぶ簡略化されてきた。しかし、その効果は永続的でないため、少なくとも術着とゴム手袋を身にまとうまでは清潔を保つ必要がある。

■米国外科学の泰斗

 さて、手術用のゴム手袋開発には外科学の泰斗ウィリアム・スチュワート・ハルステッド(William Stewart Halsted、1852-1922)が大きくかかわっている。

 ハルステッドは、1852年9月23日、裕福な市民の長男としてニューヨーク市に生まれた。10歳までは家庭教師による教育を、その後はマサチューセッツ州の寄宿学校を経て1869年にイェール大学を卒業、コロンビア大学医学部、ニューヨーク医学校で研修を受けたのちに外科先進国であるドイツ・オーストリアに留学、胃切除のテオドール・ビルロートとその弟子だったミクリッツ、甲状腺切除のコッヘルなど現在も術式や手術器械にその名を残す名医たちの指導を受けた。

 1880年に帰国すると、多くの病院で神業的な手術を行い、ニューヨーク随一の外科医という評判をほしいままにした。1882年には自らの母親の胆嚢切除を、妹の産後出血には自分の血液を用いた輸血を行った(たまたま、型があったのだろうが)。この年には進行乳がんに対する乳房切断術を発表、1884年には、コカインを用いた局所麻酔と伝達麻酔を初めて行った。1889年には新規開業したメリーランド州のジョンズ・ホプキンス病院に初代の外科医長として招かれ、3年後には併設された医学部の初代外科主任教授となった。

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皮膚炎に悩まされた看護師のために…