今夏の参院選に関する企画の打ち合わせをするJX通信社のプロジェクトメンバー。リーダーの衛藤健さんが最年少だ(JX通信社提供)
今夏の参院選に関する企画の打ち合わせをするJX通信社のプロジェクトメンバー。リーダーの衛藤健さんが最年少だ(JX通信社提供)

 同社は管理職より高収入のクリエーター職の社員も珍しくない。このため管理職になることだけが「出世」ではなく、管理職は向いている人が就けばいい、という社内文化が根付いているという。できるだけ長く、安定した給与で働くためにも、「年功序列はナンセンス」と高野さんは言い切る。

 AIやビッグデータを活用し、報道向けのデータ収集を行う「JX通信社」には20代管理職が4人いる。最年少は新卒2年目の24歳。情勢調査事業責任者でデータアナリストの衛藤健さんだ。全国各地のメディアと合同で選挙の情勢調査を立て続けに実施し、注目を浴びている。

JX通信社 衛藤 健さん(24)/1998年、大分県生まれ。東京大学教養学部卒。同大学院進学後、2021年1月入社。同年9月から情勢調査事業責任者(JX通信社提供)
JX通信社 衛藤 健さん(24)/1998年、大分県生まれ。東京大学教養学部卒。同大学院進学後、2021年1月入社。同年9月から情勢調査事業責任者(JX通信社提供)

 衛藤さんは小学生のとき、政権交代や北京五輪の報道の熱量に触れ、メディアの影響力に関心をもった。東京大学在学中に「東京大学新聞」の記者として取材や編集を経験し、日々の紙面制作とは別の観点でメディアにかかわりたいと考えるようになった。都民ファーストが躍進した2017年の都議選で、JX 通信社の情勢予測が的中したのを機に同社に興味を抱き、大学3年生のときにインターンに応募。昨年1月に入社し、8カ月後に現在のポジションに抜擢された。データアナリストとしてのスキルは卒論研究で基礎的なノウハウを培ったほか、インターン時代に会社の事業への理解を深めたことが大きかった、と振り返る。

 衛藤さんが、自分が若手だと感じるのは顧客のカウンターパートと対面するときだという。

「新聞社や放送局の政治部長はたいてい40~50代なので驚かれることが多々あります。長年の取材経験を基にした現場感覚や地方の政治史など教わることも多いです」(衛藤さん)

■適材適所だけを徹底

 同社の社長は19歳で起業した米重克洋さん(33)だ。若手登用について米重さんは「私も学生起業家でしたので年功序列はもともと念頭にありません。適材適所の人材登用だけを徹底してきました」と話す。

 同社には初任給の規定や職種ごとの給与ベースもない。個人の経歴や各自のミッションで決める「オーダーメイド的な給与体系」(米重さん)だという。衛藤さんに限らずインターン時代に能力を発揮する人材はそのまま採用につなげている。

「自分で課題を見つけ、解決のプロセスを能動的に進められる人材を求めています。衛藤は最初からそれが自己完結できる人材でした」(米重さん)

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