若手の管理職登用は「人材育成の補助輪」と捉えるメンバーズ。年功序列は「ナンセンス」という(メンバーズ提供)
若手の管理職登用は「人材育成の補助輪」と捉えるメンバーズ。年功序列は「ナンセンス」という(メンバーズ提供)

 20代を即戦力として管理職に抜擢する企業が相次いでいる。年功序列が「常識」とされてきた日本での労働市場の変化の背景には何があるのか。AERA 2022年6月20日号の記事から紹介する。

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 20代で管理職昇進が可能になる人事制度はリコーや住友商事など業界を問わず、大手企業で相次いで導入が進んでいる。NTTグループも2023年度導入に向け準備中だ。 

 リコーは今年4月から役職定年撤廃とともに、20代の管理職登用も可能なジョブ型の人事制度に移行した。制度上の基準から「年齢」を外し、よりフレキシブルな適所適材の人事配置を行う。具体的には、昇格試験を廃止。新規プロジェクトのマネジャー(課長職)などに若手を積極登用する一方、57歳の役職定年を廃止し、60代の役職継続も可能にした。これにより、シニア活躍と若手抜擢(ばってき)の両立を図る。

「成果を出せる人を登用していくのに変わりはありません。ただ、評価基準が過去の実績や成果ではなく、現在進行形で成果を出せる人を柔軟に抜擢できるようにしました」(人事総務センター)

AERA 2022年6月20日号より
AERA 2022年6月20日号より

■最短5年で管理職に

 住友商事は昨年4月に導入した新たな人事制度で、管理職の等級ごとの在留年数などの年次管理を撤廃。管理職昇格に必要な最低在留年数も短縮した。これに伴い、大卒入社で最短8年かかっていた管理職への昇格が最短5年になり、20代で管理職につくことも可能に。同社は「若手の抜擢」が主目的ではなく、「全世代の人材活性化と組織パフォーマンスの最大化」が狙いと説明。年功序列から脱却を図る中で、若手の早期登用も織り込むスタンスだ。

 NTTグループは労働組合との労使間協議で、「入社年次や在級年数ではなく、専門性の高まりや業績・行動の達成度に応じた評価・昇格運用への転換」や、「市場価値の高い専門性を有する社員を管理職並みの処遇に抜擢できる」ことなどを盛り込んだ新たな人事制度を提案。新制度導入後は、20代でも管理職並みの処遇を受けるケースが出てくることも想定しているという。

 若手登用はベンチャー企業が先行している。注目はZ世代の管理職だ。

 デジタルマーケティング支援会社「メンバーズ」で入社3年目の今年4月に課長職に抜擢されたのは竹内南那子さん(24)。20~40代の約20人のチームを束ねる。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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