特に高齢者については、筋肉量が低下して要介護状態になりやすい「フレイル」や「ロコモティブシンドローム(運動器に問題が生じて移動機能が衰えた状態)」にもつながるとして、スポーツ庁は昨年11月にガイドラインを示し、運動習慣などを通じての予防を呼びかけた。

 フレイルは英語のFrailty(虚弱)を語源としたもので、身体的な変化だけではなく気力の低下や社会性の低下といった精神的なものも含まれる。

 中高齢者の健康増進について詳しい筑波大学人間総合科学学術院の久野譜也教授は言う。

「高齢者で特に課題なのが、社会との関わりがなくなり会話が減るということ。会話が減ると認知機能の低下が進む可能性が高い。人と話さないことは抑うつや社会性の低下を引き起こします。逆にいうと、昨年2月ぐらいから閉じこもっている方は臨床的にはうつ傾向にあると予想できるんです。ある程度うつが進んできてしまっている」

 外出が減り社会参加がなくなり、うつ傾向になって寝たきりにつながる。一直線にその状態に進んでしまう状況が今、社会的に作り出されていると久野教授は危惧する。

 高齢者の話でしょ、とあなどってはいけない。50代からも「プレフレイル」、つまりフレイル前段階のリスクはあると久野教授は指摘する。

 他方、現役世代はコロナ禍での健康リスクを「老化」として感じているのかもしれない。日本能率協会総合研究所が2020年9月に首都圏在住の15~79歳の男女個人を対象に行った「健康ニーズ基本調査2020」からは、老化のリスクを感じている人が増えている実態が明らかになった。18年と比較し、男女ともに「身体の老化防止」への関心が高まっていることもわかった。全体では36%から42%と6ポイント増加。30代から50代の現役世代においても、男女ともに増加が見られている。

■30代も60代の状況に

 前出の久野教授の研究によれば、40代以降、筋肉は1年で約1%ずつ落ちていく。在宅勤務で極端に活動量が落ちた状態が続けば、筋肉量の減少はさらに加速するのだ。

「30、40代でもこの生活が5年続けば、60、70代のような状況がやってくると言ってもオーバーではありません」(久野教授)

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