「“子どもを置いて仕事に行けない”“イライラが募って手をあげてしまいそう”“兄弟喧嘩が増えて見ていられない”など多数の相談がありました。子どもがいつも通りストレスを発散できて、親も愚痴をこぼしたり、助けてと言える環境が必要だと考え、運営を続けています」

 児童精神科医で、半蔵門のびすここどもクリニック副院長の河嶌(かわしま)讓医師は、精神的に不安定になる子が増えていると話す。

「受診しに来る子の多くが不安がると同時にイライラしています。同じような生活に飽きた、外に出たい、いつになったら友達と会えるのか、といった声が非常に多い。子どものストレスは身体や行動に表れます。眠れない、食欲が落ちる、頭痛や腹痛、イライラが増した、乱暴になった、親から離れなくなったなどがあれば要注意です」

 河嶌医師は、子どもの不安を和らげるためには親子が一緒にいる時間を増やすこと、子どもと一緒に時間割やルールを考えることが有効だという。

「精神的な安定には、生活のリズムを整えることが大切です。細かくしすぎる必要はありませんが、勉強や遊びの時間割、ルールを一緒に考えてみてください。いわゆる『3密』を避けたうえでの外出や運動も欠かせません。ポイントは子ども自身に決めさせること。自分で考えて行動することで自立につながりますし、できたこと、頑張れたことを親が評価すれば親子の関係性も深まります」

 子どもの支援活動を行うセーブ・ザ・チルドレンでは先月、18歳以下の子どもを対象に今の気持ち、困りごとを聞くアンケートを実施、6日間で千件近い回答が集まった。担当の赤坂美幸さんによると、最も多いキーワードは「友達」だったという。

「友達に会いたい、友達がどうしているのか心配、楽しかったクラスがこんな形で終わるなんて……などの声は年代を問わず集まりました。一方で感染そのものや情報不足からくる不安は小学生に多く、中学生以上になると生活リズムの乱れ、勉強の遅れなどを不安視する声が多く上がっています」(赤坂さん)

 小学生からは、「ウイルスが怖くて外に出られない」といった不安のほか、「なぜ休校になったのかわからない」との声もあった。赤坂さんは、親や周囲の大人が子どもに対し、正しい情報や休校の理由、意味などを伝えることが重要だと指摘する。

「子どもは大人のように情報を取捨選択して集めたり、適切に処理することが難しい。身近な大人が丁寧に説明することで、子どもなりに理解して乗り越えようとします。子どもの安定には大人の力添えが必要です」

(編集部・川口穣、ライター・井上有紀子)

AERA 2020年4月27日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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